2009年5月7日木曜日

変わりゆくleft and right

今年僕が最も注目している日本語ブログ、himaginaryの日記に僕が昨年中国で勉強したことドンピシャのエントリーが。

ワシントンコンセンサスから北京コンセンサスへ

北京コンセンサスって中国の大学院の最初の授業でやった概念なんです。教授は中国のいわゆるNew Left(新左派)の代表格で米国発の金融危機のニュースに心からウキウキしていた人なんだけど、かなり好きでした。おっと脱線。

そもそも開発の領域における世銀・IMF批判でよくつかわれるワシントン・コンセンサスという言葉は、wikipediaによると以下の政策をよしとするイデオロギーを表す。


(1)財政赤字の是正、(2)補助金カットなど財政支出の変更、(3)税制改革、(4)金利の自由化、(5)競争力ある為替レート、(6)貿易の自由化、(7)直接投資の受け入れ促進、(8)国営企業の民営化、(9)規制緩和、(10)所有権法の確立

つまり世間的な言葉でいえば、レーガニズム、サッチャリズム、コイズミズム(?)、あるいは新古典派とか新自由主義(ネオリベラル)と呼ばれる政策傾向一般ってことなのかな。80年代には、conditionalityを使って世銀・IMFがアフリカやラテンアメリカの途上国において小さな政府的政策を推進し、結果彼らを以前よりさらに窮乏させたり、格差を拡大させたとして、それらの地域出身の留学生が往々にして憎悪を抱いているイデオロギーです。

世界的な経済危機が進行し、アメリカの経済学者の間で銀行国有化が最善の策とされ、金融セクターに対する様々な規制が議論される中で、ワシントン・コンセンサスへの信頼が消え去りつつあるというのは確実だと思う。一方で台頭してきたのが北京コンセンサスなるものだというのが上記記事の話です。

ホルスラグが言うとおり、オバマの経済政策ってかなり北京コンセンサス的に見える。そもそも選挙前も、今でも聞かれるオバマの形容詞はpragmatist。これってつまり、目的のために最も現実的な手段を採用することができる人ということ。ここでオバマの掲げる目標が(少なくとも当面のところは)経済危機を脱し、アメリカの力強い経済成長を実現することであるのだとしたら、そしてそのために金融セクターへの規制を推進し、ときには保護主義的政策を容認するならば、それはまさに北京コンセンサスそのものだし、現実にオバマはそれに近い動きをしてきている。銀行国有化なんて実現しちゃったら、そのときアメリカの経済システムはSocialism with Chinese characteristics以外の何物でもないでしょう。

上記記事でとっても面白いのは以下の部分

経済危機、および中国をはじめとする発展途上国の台頭による米国の相対的な力の衰えにより、米国も自由貿易の錦の御旗だけではやっていけなくなり、より現実的・経済的な方法を取る必要に迫られた、というわけだ。

米国が経済におけるモラリズムを捨てることは、そのソフトパワーを部分的に失うことを意味する。その結果、これまでと比べ米欧間の紐帯が弱まる可能性がある。これからはそうしたモラリズムではなく、実際に経済をどれだけ上手く運営したかで世界への影響力が決定される時代が来る、というのがホルスラグの見立てである。

つまりつまり、できるだけ規制に束縛されない世界経済を理想とした新古典派こそモラリスティック(道徳的)で、経済成長のためには市場への積極的な介入を辞さない新左派がプラグマティック(実利的)ってことが全体を通して言われてるわけです。80年代に生まれ、小泉の登場まで10代を過ごした僕の中ではなんとなく右=冷徹な現実主義、左=情熱的な理想主義みたいなイメージだったんですが、そんな印象はすでに遠い過去のものっていうことなのかなぁ。たぶんこれこそ、北京コンセンサスの台頭によるパラダイム・シフトってことなんだろう。そして今、アメリカに価値の領域でも対峙していると想定されるのは他のどこでもなくやっぱり中国なのですね。

21世紀、変わりゆく世界...だから世界は面白いっす。

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