2009年2月3日火曜日

アメリカ-中国に対して・・・

前々回のエントリーで触れた、現在の経済危機と世界の経常収支不均衡のリンク、そして中国の為替介入をあたかも危機の犯人と言っているかのような議論について。あのまま書きっぱなしだと誤解があるような気がしたし、Financial Timesのブログから補足の記事をいくつか。


まずとっても基本的なこと。オバマ新政権の財務長官Tim Geithnerが中国の為替レジームに直接言及したこと、そしてその後発展していった中国とアメリカの非難の応酬は、場合によってはアメリカと中国という今世界で最も重要な二国間関係を傷つけるかもしれない、かなり敏感なものだってこと。僕が前学期授業を受けたHu Angang教授も中国の為替政策について生徒から質問されると、いつも日本の事例-プラザ合意後の急速な円高が長期景気停滞につながったこと-に触れて、中国はアメリカのプレッシャーには屈せずに徐々に人民元を強くしていくというコメントを繰り返していました。

Wolfの言葉でいえば"The sensitivity is understandably extreme."ってことです。Wolfは最後にこの議論のエスカレーションによって輸入課徴金のような保護政策がとられるリスクは現実的に存在すると言っているし、アメリカも中国もクールダウンすることが切に求められているわけです。

そしてこの辺がポイント。

As I remarked in yesterday’s blog, domestic demand, rather than the exchange rate, is the real issue. The implication of my analysis, as I indicated yesterday, is that domestic demand needs to grow by at least 12 per cent a year in real terms.

A further implication is that, in current circumstances, it makes far more sense for China to have a target for the growth of domestic demand than for growth of GDP. This is an essential shift in policymaking.

Wolfは為替レートではなく、真の問題は(為替レートに影響する)国内需要だと言っています。さらに、中国はGDP成長ではなく、国内需要の成長をターゲットにする抜本的な政策立案方針の転換を行うことが賢明だと。Wolfは中国の”不正な為替レート操作”については本当のことだと信じているし、今回の危機の原因の一つに世界のマクロ経済的状況(米中を中心とする経常収支不均衡)があったと信じているからこそこう主張しているわけなんだけど。さらにこの主張は結果的に人民元が対ドルで上昇する政策を求めているわけだけど、中国の為替介入を直接糾弾するより、政治的にも安全で、本質的で、中国にとっても現実的な提言になっているように思われます。

さらに踏み込んでいるのがこれ。


Prasadも同様、すでに危機に陥っている世界経済は、アメリカと中国という主要二国の貿易摩擦を受けとめる力はないと述べていて、いかにこの問題が敏感で重要な問題であるかを強調している。そしてアメリカと中国が双方に利益になる「取引」をするよう提案しています。取引内容を簡単にまとめると以下。

1.金融政策と財政政策をフルに用いて、短期的に国内需要を増加するように双方が明確にコミットする
2.中国は為替レジームを市場の力によって変動するように以前より柔軟にする。一方でアメリカは景気が回復し次第、財政赤字を削減していくためのプランを策定、明示する。
3.アメリカは中国にIMFにおける投票権の拡大や、金融安定化フォーラム(基本的にはG7)への参加を認める。

特に3が特徴的です。実際、中国は既存の国際機関でさらなる影響力を発揮していくことに以前から意欲を示しているし、国際機関を今の世界のパワーバランスに即したものに変えていくっていう意味でも、かなり有意義な取引だと思います。(ちなみにPrasadはIMFの元中国部門局長です。納得。)

話は変わるけど、こういった提言がイギリスのメディアを通じて発信されるっていうこと自体かなり興味深いです。この手の超一流の専門家によるブログがウェブサイトに敷設されているってあたりも、日本の新聞各紙とは全く違う気がするし。今回の金融危機の対応としての主要銀行の一部国有化の動きについても、イギリスの中央銀行が先鞭を切って、アメリカや大陸ヨーロッパが追随するっていう形になってるし。FTやEconomistなどのメディアと、Oxford, Cambridge, LSEなどのハイレベルな教育研究機関が持つ世界の議論をリードする力は、さすが七つの海を制した国だなぁ、と思います。日本も、中国がCCTVの英語放送を世界中に拡大してるみたいに、英語メディアを持ってこういう問題にたいして積極的な提言をしていくっていうことが必要なんじゃないかな。せっかく”失われた10年”の経験もあるわけで。

でも、新聞各紙には、まずは日本語で、僕らの政治や経済、金融、社会についてのリテラシーを向上させるようなウェブサイトを充実してほしいと本気で思っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿