アメリカで高まる中国バッシングの話の流れがとても分かりやすくまとめられています。要点をまとめると以下。
・中国が(部分的には通貨操作によって)安い製品を輸出したことは、途上国の低所得な消費者の日用品の購買力を上昇させるという”良い”側面を持っていた。
・中国とその他アジアの国の高い貯蓄率は確かに世界の利子率を下げ、アメリカの住宅バブルの形成に間接的な責任を持つが、銀行の過剰な借り入れと貸出、アメリカ政府によるサブプライム・ローンの奨励の方がはるかに責任が重い。それらこそが今回の危機の本当の容疑者だ。
・過去10年にわたる中国バッシングは1980年代の日本バッシングを思い起こさせる。日本の圧倒的な対アメリカ貿易黒字、大規模な米国債の蓄積、そしてアメリカにおける資産の購入は、アメリカを傷つけることはなく、日本政府や日本のビジネスに逆に跳ね返ることになった。今回の件に関しても、最終的には似たような結論が導きだされるのではないか。
基本的には中国バッシングに対する警鐘的な内容なのに、最後の部分がかなり不吉w。以前からMichael Pettis氏あたりが指摘しているけど、過去の国際的な経済危機においてより甚大な被害をこうむったのは赤字ではなく経常収支黒字の国、つまり基本的には国内の消費に対して生産が大きく、ショックによる調整のために貯蓄を消費へシフトしなければならない国だったということもあるし、結果的には今回の危機で中国の方がアメリカより大きな被害をこうむるのではないかと示唆しているようにも見えます。今のところ中国経済のデータは予測されていたよりも良いくらいらしいけど、少なくともより小規模な黒字国のAsian tigersはすでにひどいことになってますね。日本も。
僕はこういうタイトルをつけられると読みたくなってしまう性質ですw。ちょっと古いものだけど、Harvard KSGのRodrik教授によるかなり巨視的かつちょっと抽象的な危機後へのガイドライン。Capitalism 3.0とつけたのはなぜかというと、どうやら20世紀初期のアダム・スミス的な、政府が市場を機能させるために最小限の介入をするシステムを1.0、そしてRodrikによると1970年代まではうまく機能していたというケインズ的な、世界的にGDPにおける政府支出の割合が圧倒的に高まった状態-福祉国家システムを2.0としているからみたい。基本的には一国単位でうまく機能することを意識して作られたCapitalism 2.0は1980年代以降、世界経済の結合によってほころびていった。現在の経済危機は、2.0が今の世界においてうまく機能しないことを証明している、らしい。
ここで上の記事で扱われていた中国の件がまた出てきて面白いんだけど、Rodrikはこう言っています。
When Chinese-style capitalism met American-style capitalism, with few safety valves in place, it gave rise to an explosive mix. There were no protective mechanisms to prevent a global liquidity glut from developing, and then, in combination with US regulatory failings, from producing a spectacular housing boom and crash. Nor were there any international roadblocks to prevent the crisis from spreading from its epicentre.
中国型の資本主義とアメリカ型の資本主義が出会うことによって、ほとんど安全弁がない状態で「爆発性混合物」が生じた、と。言葉は違えどBeckerと同じこと言ってます。このあたりはすでに著名な経済学者にかなり広く共有されている認識なのかも。結局、Capitalism 3.0っていうのは、世界規模で市場とそれを支え(規制する)機構のより良いバランスを改めて模索していく上で生まれるGlobal governanceの形ってことなんだと思います。その必要性を認識して世界各国がきちんと協議していこうってことかな。
行動ファイナンスの権威、YaleのBob Shiller教授による記事。
アメリカでは、危機に際して人々が1929年から始まった大恐慌について関心を持ち、語り始めている。Shillerは大恐慌に人々の注意が向けられることは現在の状況を考えれば合理的だけど、大恐慌を語ること自体が現在の危機の原因なのだと指摘しています。なぜなら、語ることによって大恐慌が人々の将来に対する期待のモデルとなり、ケインズの言うところのanimal spirits―人々の消費意欲や企業による雇用、ビジネス拡大の意欲―を削いでしまうから。こういう心理学的要素が入ってくる話も僕の好みですw。
面白いところは以下のところ。
The popular response to vivid accounts of past depressions is partly psychological, but it has a rational base. We have to look at past episodes because economic theory, lacking the physical constants of the hard sciences, has never offered a complete account of the mechanics of depressions.
(過去の不況の鮮明な描写に対する大衆の反応は部分的には心理的なものだけど、合理的な根拠も持っている。なぜなら、経済学の理論は自然科学が持っている普遍性を欠いており、不況の構造・力学について完璧な説明がされたことなどないから、過去の事例にさかのぼらなければならないからだ。)
この前友達と似たようなことを話していて、「なら不況について話さなければいいじゃん!」みたいなことを言われてどぎまぎしてたんだけど、こう答えればよいわけですね。Shillerによれば、1929年からの大恐慌が取りざたされたのは1981-82年のときも同じで、87年のブラックマンデーのときにもいくらかの注目を集めたとか。さらには、その1929年の大恐慌のときには、それ以前の不況-1870年代と1890年代のもの-が取り沙汰されたらしい。記憶、記録が人々の期待形成に関わって、新たな不況が生まれる。「歴史は繰り返す」っていうのは、大衆による心理的な自己実現のプロセスのことを言ってるのかもしれないですね。
経済危機と一言で言っても、特定の会社の破たん・救済や人々の心理を扱ったShillerの記事のようなミクロなものから、上記Beckerの記事のような二国間関係について扱ったもの、Rodrikのような今後のGlobal governanceについて歴史の流れの中で模索しようとするものなどマクロなものがあって、その切り口や語られ方は本当に多様で膨大。だからこそ途方にくれるんだけど、ニュースを読んでいて本当に面白い時期でもあると思う。昨今のニュースを読みながら、人って社会って世界ってほんとにおもしろいなぁって感じている僕はあまりにも浮世離れしていて、不謹慎なのかもしれないけど。少なくとも、僕の本やその他情報に対するAnimal Spiritは失われていませんw。なるほど、だから出版やメディアは不況に強いと言われているのか!
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